-shared-img-thumb-YUK_cafehitoyasumi_TP_V

記憶の不完全さが、文章に臨場感をもたらす


My Eyes Tokyo 編集長の徳橋さんにお話を伺っているとき、実は内心、少しビクビクしていた。

というのも、いつもどおりのスタイルで、メモも取らず、録音もせずに話を聞いていたからだ。

プロのインタビュアーと呼ばれる人たちが、どのように仕事をしているのか、ぼくはその現場を覗いたことがない。それどころか、インタビューのやり方というものを、誰かに教わったこともない。

だから、「記憶を頼りに文章を書く」というぼくのやり方は、もしかしたら失礼に当たるのではないかと感じていた。だから最初の方に、

「ぼくはいつも、人の話を聞くとき、メモを取らないんですよ」とカミングアウトした。

それに対しては、「そうなんですか」という感じだったが、「録音もしないんです」と言うと、「え、録音も?」とさすがに驚いた様子だった。

理由はいくつかある。

①会話を楽しむことに集中できる

何度か、メモを取ってインタビューをしたことがある。でもそうすると、メモを取ることに意識がいってしまい、ときどき会話のスピードに追いつかなくなることがある。

メモを取らなければ、話を聞くことに集中できる。そして、その瞬間の会話を存分に楽しむことができる。

②相手の懐に入り込める

Q&A形式のインタビューがあまり好きじゃない。あらかじめ質問を用意していると、相手も硬くなるし、こちらも硬くなる。だけどメモを取らないで、普通にお茶をするように話していると、相手はリラックスしてくれる。リラックスした状態、素の状態で出てきた言葉が、その人の本質だと思う。それに打ち解けてくると、少し聞きづらい質問もしやすくなる。

③不完全な記憶が文章に臨場感を生む

普通、人と2時間話したとして、翌日までその話の内容を全て覚えているという人は、なかなかいない。ぼくだって、大半は忘れている。逆に言えば、一日経っても覚えている話は、それだけ印象的だった話、おもしろかった話だといえる。だからぼくは、それを書く。

メモを取ると、話した内容を全て記録することができる。だけどその分、文章が平坦になり、メリハリがなくなる。

2時間話を聞けば、その中におもしろい話もあるし、逆にそこまで響かない話もある。全てを書くのではなく、おもしろかった話を抜き取りたい。そのために、記憶力の不完全さを利用している。「響かない話は忘れる」という、すごい能力だと思う。

記憶を頼りに書くことで、文章に瑞々しい臨場感が伴う。あたかも読者がその場にいるかのような文章を、紡ぎ出すことができる。

④早く書ける

印象に残った話に絞るということは、「全てを書かない」ということでもある。だからその分、記事を仕上げる時間は早くなる。ハイペースで人と会い、それぞれの魅力を伝えていく自分にとっては、このやり方が合っていると思う。

sponsored link


コメントを残す