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「雨の日が待ち遠しくなる傘作りを」皇室御用達・前原光榮商店の理念


新御徒町駅から徒歩5分の場所に、皇室御用達の傘屋「前原光榮商店」がある。

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「傘を持つことは、装うことである」
 
「雨の日が待ち遠しくなるような傘作りを目指したい」
 
数週間前に、大切にしていた傘を失くし、新しい傘を探していたぼくは、このお店の理念に感動し、即座に店頭へ足を運んだ。
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「このお店の傘の特徴は、『16本の傘骨』ということですが、具体的に教えていただけますか?」
 
代表取締役専務の前原誠司さんは、実際に傘を開いて、教えてくださった。
 
「一般の傘は、8本の傘骨がほとんどですが、うちは16本骨で作っています。16本骨の傘は強度が増すのはもちろんですが、開くと面積が大きくなり、より雨をしのげます。そして、真円に近い形になるので、シルエットが美しいのです」
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確かに、美しい。どこか和傘のような印象を受けた。
 
「傘を閉じたときも、美しいんですよ。ほら」
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本当だ。8本骨だとふにゃっと生地がよれてしまうが、この傘は、閉じていてもきれいな形になる。機能美を追求したがゆえの16本骨なのだが、やはり作るのには手間がかかり、それゆえ値段も高くなる。
 
「職人さんは、ここにはいないのですか?」
 
「ここにはいないんです。職人は、生地、傘骨、手元、加工と4つのパートでそれぞれ異なり、別の場所で分業しているんです」
 
傘という漢字には、4つの「人」がある。それはまさに、この4つの職人を現しているという。
 
「洗練された美しさと機能を持つ傘は、匠の技の粋が集まらなければ得られません」
 
「今って、若い人の多くがビニール傘を使うじゃないですか。でも、以前良い傘を使ってみて、やっぱり愛着のある傘を大切に使いたいなと思い、ここへ来ました」
 
「今に始まったことじゃないんですけどね。戦後にビニール傘が生まれて、当初は高級品だったんですが、海外での大量生産が可能になって、爆発的に広まっていきました。戦後は、うちのように完全手作りで傘を作っている店はたくさんあったんですよ。
でも、みんなそれではやっていけないから、安く作れる方にシフトしていきました。職人さんも減りましたね。でもうちは、このやり方しか知りませんでしたから。だから当時は全然売れませんでしたよ。それでも地道にやってきて、最近ですね、傘にこだわりを持つ人が増えてきました」
 
現在、日本の傘の年間消費本数は、1億3000万本といい、全国民が毎年1本ずつ消費している計算になる。そのうち約60%が、中国製のビニール傘だそうだ。
 
色々と傘を見せていただきながら話を聞いているうちに、自然と「ここで傘を買おう」という思いが湧いてきた。
 
最初は、外見が明るい傘がいいかなと思ったが、外は黒だけど内はゴールドという傘に強く惹かれました。しかも内骨がカーボン製(通常はスチール製)で、とても丈夫で軽い。その分値段は張るが、直感でこれがいいと思ったから、決断をした。
 
最後に、手元を選ぶ。
 
「実は、うちの傘の値段の約半分は、手元の値段です」
 
「え」
 
「生地は、5年ほど使っていると、だんだんと痛んできます。ですが、手元はそれこそ一生使えるものです。だから、数年経って、生地だけ交換しにいらっしゃるお客様も多いです」
 
手元は、木の種類がたくさんある。よく使われているのは廉価なヒノキだそうが、ぼくは10種類近くある手元の中から、「エゴチャ」というものを選んだ。エゴノキという木で、艶が出てくるととても美しくなる。
完成した傘が到着するまでに、約1ヶ月かかったが、この新しい傘のおかげで、雨の日を前向きに過ごせている。
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